この本は、英国南端にあるブライトンに住む日本人とアイルランド人のハーフの11歳の男子のお話しです。
名門カトリック小学校から、息子の意思で地元の「元底辺中学校」へ進学、日常の出来事を綴っています。
英国は、日本より生活レベル、人種差別が激しく、11歳の子どもいえども、毎日荒波の中を掻い潜っていかなければいけません。
毎日、“苛めと戦っている本”と思いきや、とんでもないです。
主人公は、11歳の子どもにしては「悟りでも開いているのではないか?」と思うほど、時折大人びた事をいう冷静男子。
プラス、子どもの人格を大切に思い、意見を尊重し、時折、失敗し地雷を踏んでしまう日本人母ちゃん。
同じ島国なのに、日本と違い、EU政策で移民を受け入れ、多様性にとんでいる英国での学校生活が、未知の世界でとても面白かったです。
しかし、「出る杭は打たれる」的な虐めや、優秀な学校への劣等感など、日本と同じと思う部分もありました。
なぜこの本が面白いのかは、この親子がとてもコミュニケーションが取れていて素晴らしいところだと思います。
なにか問題が起きても、まず子供の意見を聞き、よく親子間で考え、乗り切っていく所が、読んでいてモヤモヤしないのです。
原作者のブイレディみかこさんの人間性や、息子さんのおおらかさに称賛を与えたいです。

内容

主人公は、アイルランド人の父、日本人の母を持つ11歳の男子。
名門カトリック小学校から、夏休み見学に行き、気に入ってしまった地元の「元底辺中学校」へ進学を決めます。
母は「何で名門から、地元でもいまいちな評判の底辺中学校?」と、未だに戸惑いがあります。
そんな母を知らずか、東洋人ハーフ、背の小さな息子は、もう学校に馴染んでしまっています。
保育士として母は働いていたので、息子は保育園へ行き、小学校はカトリック系で手厚い教育を受けていました。
中学校になり、やっと母親の出番が回ってきて、好奇心旺盛な母ちゃんは、学校へ積極的に関わっていきます。
地元の元底辺中学校には、家庭環境が複雑な子、人種差別発言を躊躇なく言ってしまう子など。
息子は分け隔てなく、色々な子たちと仲良くし、時にはひどい言葉を発している子には注意したり、ボロを着ている子には、家に招き、母ちゃんがリサイクルしている制服をあげたりしています。
息子にとって、それをする事が当たり前で、なんの特別な事ではないのです。
そんな息子も、英国では東洋人と言われ、日本に帰ったら、外国人扱いを受けますが、それを見ている母ちゃんの方が、グサッときてしまいます。
この息子がすごい所は、時折、感心させられる発言をします。

「人間は人をいじめるのが好きなのではなく、人を罰するのが好きなんだ」

これは、差別発言がひどかった子が、反対に反撃にあい、今ではいじめられっ子になっている話での会話。
息子さんは11歳なのに、11歳ではないような・・・。
自分を客観的に見れる”精神年齢大人の子”の成長が楽しみです。
また、英国の性的マイノリティ教育の進み具合には、驚きました。
マツコ・デラックスさんや、ikkoさんなど、世間に認知されてきていますが、日本の中学校でLGBTQの勉強まで発展していません。
英国では、11歳の子ども同士で性的マイノリティの会話をするのが、すごいです。

目次

  1. 元底辺中学校への道
  2. glee/グリー」みたいな新学期
  3. バッドでラップなクリスマス
  4. スクール・ポリティクス
  5. 誰かの靴を履いてみること
  6. プールサイドのあちら側とこちら側
  7. ユニフォーム・ブギ
  8. クールなのかジャパン
  9. 地雷だらけの多様性ワールド
  10. 母ちゃんの国にて
  11. 未来は君らの手の中
  12. フォスター・チルドレンズ・ストーリー
  13. いじめと皆勤賞のはざま
  14. アイデンティティ熱のゆくえ
  15. 存在の耐えられない格差
  16. ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン

ブレイディみかこ

保育士・ライター・コラムニスト。
1965年福岡市生まれ。
県立修猷館高校卒。
音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。
ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。
2017年に新潮ドキュメント賞を受賞し、大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞候補となった『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)をはじめ、著書多数。

【受賞】

  • 第7回 ブクログ大賞 エッセイ・ノンフィクション部門
  • Yahoo!ニュース 本屋大賞2019 ノンフィクション本大賞
  • 第73回 毎日出版文化賞特別賞
  • 第2回 八重洲本大賞

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