死者との再会を叶える使者「ツナグ」。
長年務めを果たした最愛の祖母から歩美は使者としての役目を引き継いだ。
7年経ち、社会人になった彼の元を訪れる依頼者たちは、誰にも言えぬ想いを胸に秘めていた――。
後悔を抱えて生きる人々の心を繋ぐ、使者の物語。
シリーズ累計100万部の大ベストセラー、9年ぶりの待望の続刊!

使者“ツナグ”とは

死者本人と会う機会を用意する 面会仲介人
生きている人から「亡くなった人に会いたい」と依頼を受けます
そして、対象となった死者に「会いたがっている人がいる」と伝え、「会う」意思を確認します
死者の方にも「断る」権利がある為、必ず「会える」とは約束できません
死者の「了解」が得られたら、使者が「会う」段取りを整えます
死者は「生きていた時と変わらない姿」で現れます
使者が設ける面会は、死んだ者と生きた者、どちらにとっても一度きりの機会です
面会できるのは一晩、満月の夜が、一番面会時間を長くできます

使者と依頼人が会えるかどうかは、すべて「ご縁」によるもの
どれだけ電話をかけても繋がらない人がいる一方で、繋がるひとのところには自然と縁があって繋がれます

登場人物

渋谷歩美 24歳 or 25歳 一人暮らし 使者歴 7年
     大学の専攻 美術とデザイン
     「つみきの森」の企画担当

鵜野奈緒 歩美が気になっている3歳年上の女性
     「鵜野工房」で木のおもちゃを製作
     大将 父の元、修行中

秋山杏奈 歩美のはとこの子 小学生低学年(8歳)
     秋山家の次期後継者

アイ子 祖母 歩美が大学2年の時に亡くなった
    歩美の前の使者

登場場所

つみきの森 歩美の代官山にある勤務先
      木の手作りおもちゃを取り扱う小さな会社
      歩美のインテリアデザイナーだった父と社長が知り合い

鵜野公房 軽井沢にある手作りおもちゃの家族経営の工房

秋山家 代々著名な占い師の一家
    家には家政婦や執事などの使用人が多数いる
    歩美は両親が亡くなり、祖母の兄弟の本家に引き取られ、暮らしていました

目次

  1. プロポーズの心得
  2.  歴史研究の心得
  3.  母の心得
  4.  一人娘の心得
  5.  想い人の心得

内容

第1話「プロポーズの心得」

主人公 紙谷ゆずる
特撮ヒーローを演じる新人俳優
両親は離婚、母親が苦労して育ててくれた
会わせたい人 自分が好きな女性と、亡くなった高校時代の親友に会わせたい
しかし・・・。

使者は、何故か8歳の杏奈。
紙谷は、自分の好きな女性が抱えている闇から救い出す為には、亡くなった高校時代の親友に会わせる事だと思い、使者に連絡をしてきました。
紙谷が好きな女性の名前は 美砂、駆出しの舞台女優。
「付き合って欲しい」と告げるが、美砂は「私は幸せになってはいけない」と断られ、諦めきれずにいます。
今回、杏奈が使者をしている原因の1つに、嵐 美砂の名前が出てきた事があります。
嵐 美砂は、使者の歩美の高校生時代に着ていた“ダッフルコート”をよく覚えていました。

第2章「歴史研究家の心得」

主人公 鮫川幸平
ルータイプをした80代 独身の元校長先生
教師時代の専攻は古典
現在、郷土歴史研究家 新潟に住んでいる
会いたい人 戦国時代、新潟下級領主“上川岳満”

鮫島は教員を引退後、郷土研究家となり“上川岳満”の生き方に惹かれ、ある2つの疑問を持ちます。

  • 戦国時代、なぜ、自分の村に住む農民を、ただ一人も戦に出さなかったか?
  • 「恋ひわびて 君こそあらめ 祈るとて 見てもさてある身ぞ悲しかり」は、誰を想って読み上げた歌なのか?

会って、疑問を解決する目的を持ち、使者に連絡をしてきました。
鮫島は“あんみつ”好きの少しマイペースな人ですが、鈍感ではありません。

第3章「母の心得」

主人公1 重田彰一、実里夫妻
会いたい人1 水難事故で亡くなった一人娘 芽生  6歳

5年前、重田一家は趣味の堤防釣りに来ていたところ、いつの間にか娘の芽生が、海に落ちていました。
夫妻は「ドボン」という音を聞いていなく、娘が海に落ちた事を信じられません。
未だに「亡くなった」事を受け入れられなく、後悔しています。

主人公2 小笠原時子 74歳
会いたい人2 瑛子 26歳
24年前に乳がんで亡くなった娘

時子は、瑛子が亡くなるまで専業主婦でした。
瑛子が亡くなった事がきっかけになり、自分の視野の狭さに気づき、生き方が変わっていきます。
そして、時子は瑛子と叶えられなかった事を成就させる為に、使者に連絡をしてきました。

瑛子について
瑛子の大学時代の専攻は児童文学、ドイツに留学し、卒業後も研究を続けました。
5年後、ドイツ人のカールと結婚願望を両親に伝えますが、まだ国際結婚をする方が少なく、反対されます。
そして瑛子は病気になり、一緒に帰国したカールの献身的な姿を見た両親が、結婚に承諾します。
しかし、9ヶ月後に亡くなり、しばらくして、時子はカールとドイツに行き、瑛子の足跡をたどります。

第4章「一人娘の心得」

主人公 鵜野奈緒  26歳
家族経営のおもちゃ工房の半人前の職人
会いたい人 突然亡くなってしまった父

歩美がひいきにしている取引先の鵜野工房の大将が、突然亡くなりました。
奈緒は、父が大好きで「工房を継ぎたい」と思っていましたが、了解を得る事ができませんでした。
奈緒が悩んでいる姿を見て、歩美は「使者」を教え、「大将に会わせたい」と気を揉みます。
また、歩美は大将に「気に入られている」と思っていましたが、葬儀で見知らぬ人が語っていた“大将の言葉”が胸に刺さり自信喪失しそうになっています。

第5章「想い人の心得」

主人公 蜂谷 茂 85歳
神楽坂の料亭「八夜」のオーナー ふわふわの眉毛の羊に似ている
会いたい人 修行先のお嬢様 神岡絢子  16歳

歩美の祖母 アイ子が使者をしている頃から、初春に依頼をしつづけ、何度も断られている依頼主。
40代の頃から5年間隔、70代で3年になり、最近はご無沙汰していました。
絢子さんにとって、蜂谷さんは“ただの修行中の板前”で鼻にも掛けない相手。
出会った頃は、絢子さん14歳で、蜂谷さん18歳の初恋でした。
身分も違う相手が「自分に会いたい」なんて、とんでもない事ですが、蜂谷の年齢が「85歳」と聞き、会う事にしました。

まとめ

あれから7年経過し、歩美は社会人となっています。
成長した姿が描かれているので、“ツナグ”ファンにとって、嬉しい一冊です。

第1話

使者が小学生なので、とても驚かされますが「歩美に良からぬ事が起きたのでは・・・?」と心配になりましたが、後で登場しますので、ご安心を。
使者の女子は、大人びていて、いい味を出したキャラクターです。

第2話

いつかは「『“歴史上の人物”に会いたい』と、願ってくる方が登場するだろう」と、思っていました。

第3話

子どもを先に亡くした2人の母親が登場し、涙なしでは読めません。
この本で一番素敵な場面は「時子が娘の瑛子に”ドイツ語”で語り掛けるところ」です。

第4話

初めて、死者に会わないお話です。
使者に頼らなくても「自分の進むべき道を、しっかり選ぶ事ができる人が存在する」と確信できたお話です。

第5話

何度も断られ続けても、死者への面会を希望する蜂谷さんの夢は、とても美しい情景が浮かびます。
表紙の絵が“桜”、理由も知ることができます。

今回は、使者の過去の依頼人が登場、依頼人と使者の歩美が日常時に再会、“縁”をとても感じました。
また、歩美と奈緒の未来も楽しみで、次回作を期待してしまいます。

辻村深月と松坂桃李インタビューから

前作“ツナグ”から、9年ぶりの続編刊行。
松坂桃李にとっても“ツナグ”の主演が、自身のターニングポイントになったそうです。
映画「ツナグ」は、祖母 樹木希林、大叔父 仲代達矢、死者 八千草薫などの豪華キャストでド緊張。

第1話

語り手が松坂も演じた事がある“特撮ヒーロー”、歩美でない者が“使者”だったので「歩美、どこ?」になり、そして“オチ”まで用意されていた事に、笑ってしまったそうです。

第2話

辻村は、前回の映画の宣伝で、キャスト人が「歴史上の人物に会うとしたら誰?」の質問を受けている場に遭遇し、続編を書くにあたり「歴史上の人物に会いたい人」を登場させようと思っていたそうです。
しかし、“上川岳満”はフィクションで、領主“上杉謙信”からヒントを得て、作り上げていったそうです。

第3話

この話は、事実がベースになっているそうです。
「親が子供を送らなければいけない“つらさ”も書かなければいかない」と思ったが、重田夫妻の登場は苦しく、「東京會舘とわたし」執筆時に出会った時子のモデルも、登場させる事にしたそうです。
そして、歩美役目は、生と死だけでなく“縁”を繋ぐものなのだという印象を強くしたお話にしたそうです。

総括

辻村は、映画のお話を頂かなかったら、続編を書く気持ちにならなかったそうです。
上映時から7年経ち、本の中の歩美も、同じ7年生きています。
そして今回、歩美は「将来、奥さんになるだろう」女性に出会っています。
“将来の奥さん”を登場させたきっかけは、映画プロデューサー「歩美くんは、奥さんに“ツナグ”の事を、どのように話すのだろう」の一言がきっかけになったそうです。
このお話は“歩美の転機”がハッキリ書かれておらず、“間に流れる時間”で描いているそうです。
10年後、次回続編を書くなら「歩美の“結婚話”」にしたいそうです

辻村深月プロフィール

1980年2月29日生まれ
千葉大学教育学部卒業
2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞し、デビュー
2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞
2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞
2018年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞受賞
著書に『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『島はぼくらと』『盲目的な恋と友情』『朝が来る』『東京會舘とわたし』『青空と逃げる』『傲慢と善良』など多数。

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